本ページの主役 アライグマ Raccoon
アライグマ科アライグマ属。目の周りに黒いマスク、眉のあたりが白く、額に黒線。鼻先の白線はない。
家獣ラボ|アライグマの章
目の周りに黒いマスク、縞模様の尾、人間の手のような前足。
北米由来のアライグマは、外来生物法によって飼育・運搬・放逐が禁じられた
「日本の自然に持ち込むべきでない動物」として、防除の対象になっています。
読み進める前に
アライグマの被害に気づくと、誰でも「すぐ罠を仕掛けよう」と動きたくなります。けれどアライグマは特定外来生物。外来生物法の規制で、制度外で罠を仕掛けたり、生体を運搬したり、別の場所に逃がすことは違反になります。捕獲・運搬・処分は、自治体の防除実施計画に従う必要があります。
違反内容により罰則は異なりますが、野外への放出等では個人に最大で3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人には1億円以下の罰金が科されます。これは害獣を駆除するつもりの行為でも、法律上は同じ扱いになります。
ただし、多くの自治体は外来生物法に基づく「防除実施計画」を策定していて、防除講習会を受けて捕獲従事者登録すると、わな猟免許なしでも合法的に捕獲に参加できる枠組みがあります。このページは、その制度の中で何ができて何ができないか、整理するためにつくりました。
第1章|似ている4種を見分ける
中型の野生動物が屋根裏や庭に現れたとき、アライグマ・ハクビシン・タヌキ・アナグマは外見で混同されやすい4種です。アライグマだけが特定外来生物で、適用される法律が他の3種と異なります。
アライグマ科アライグマ属。目の周りに黒いマスク、眉のあたりが白く、額に黒線。鼻先の白線はない。
ジャコウネコ科ハクビシン属。額から鼻先にかけて1本の白線。耳の付け根や頬にも白斑。
イヌ科タヌキ属。目の周りが少し黒い。鼻先の白線はない。アライグマのような「眉白」もない。
イタチ科アナグマ属。目の周りが黒く、鼻先にかけて白い線。ハクビシンと混同されやすいが、ずんぐりした体型と短い尾で見分ける。
| アライグマ Raccoon | ハクビシン Masked Palm Civet | タヌキ Raccoon Dog | アナグマ Japanese Badger | |
|---|---|---|---|---|
| 分類 | アライグマ科アライグマ属 | ジャコウネコ科ハクビシン属 | イヌ科タヌキ属 | イタチ科アナグマ属 |
| 体長(頭胴長) | 41〜60cm | 61〜66cm | 50〜68cm | 44〜68cm |
| 尾の長さ | 20〜40cm(黒と灰の縞模様) | 30〜60cm(体と同じくらい長い) | 13〜25cm(短め) | 11〜18cm(非常に短い) |
| 体重 | 4〜10kg | 3.6〜6kg | 3〜10kg | 4〜12kg |
| 顔の特徴 | 目の周りに黒いマスク、眉のあたりが白く、額に黒線。鼻先の白線はない。 | 額から鼻先にかけて1本の白線。耳の付け根や頬にも白斑。 | 目の周りが少し黒い。鼻先の白線はない。アライグマのような「眉白」もない。 | 目の周りが黒く、鼻先にかけて白い線。ハクビシンと混同されやすいが、ずんぐりした体型と短い尾で見分ける。 |
| 足跡 | 5本指、爪が長く爪跡が明瞭。前足は人間の手のような形で指が長い。 | 5本指、細長い形。爪跡は不明瞭。前足約5cm/後足約10cm。 | 4本指、丸みのある形。爪跡はある。犬・猫に近い印象。 | 5本指、爪が非常に長く爪跡が明瞭。穴掘り跡が地中に残る。 |
| 主な生息域 | 屋根裏・水辺・神社仏閣・空き家 | 屋根裏・天井裏・空き家 | 庭先・縁の下・物置・林縁 | 地中の巣穴(自前で掘る) |
| 法的扱い | 特定外来生物(外来生物法/飼育・運搬・放逐は禁止) | 鳥獣保護管理法の対象(許可なく捕獲不可) | 鳥獣保護管理法の対象(許可なく捕獲不可) | 鳥獣保護管理法の対象(許可なく捕獲不可) |
サイズは環境省・国立環境研究所・各自治体の公開資料を参照(成体の目安、個体差あり)。アライグマだけが外来生物法による特定外来生物に指定され、他3種(ハクビシン・タヌキ・アナグマ)は鳥獣保護管理法の対象種です。
第2章|症状から確かめる
音だけ・糞だけでアライグマと断定はできません。複数の兆候が同時に出ているかを確認しましょう。3つ以上当てはまる場合、家屋や敷地に営巣・通過されている可能性が高くなります。
ハクビシンより重い体重を感じる足音。夜間、屋根裏や天井裏で複数個体が動き回ることもある。授乳期は幼獣の鳴き声がキューキューと聞こえる場合がある。
雨どい・サッシ・物置の扉付近に、指の長い手のような跡。アライグマの前足は5本指で指が極めて器用で、引き戸を開けたり、留め具を外したりすることがある。
湿った地面・雪・屋根のホコリの上に、5本指の長い足跡。爪跡がはっきり残るのが特徴で、ハクビシン(爪跡不明瞭)との見分けの決定打。前足は人間の手のような形。
アライグマも同じ場所で排泄する「溜め糞」の習性を持つ。糞は太く長く(5〜18cm程度)、果実の種子や昆虫の殻が混じる。屋根裏・軒先・神社仏閣の床下などで、被害が続くと堆積することがある。
雑食性が極めて高く、果樹(ブドウ・トウモロコシ・スイカ・カキ等)から魚(池の鯉・金魚)、生ゴミまで何でも食べる。トウモロコシは縦に裂いて中を食べるのが典型。
アライグマは食べる前に物を水で「洗う」ような行動をする。屋外の水場、池、シンクの周辺で、濡れた足跡や食べ物の残骸が見られる場合は要注意。
夜間、屋根や塀、樹上を歩く中型獣。目の周りに黒いマスク、尾に黒と灰色の縞模様がある個体を見たら、アライグマの可能性が極めて高い。日本に生息する中型獣で尾に縞模様があるのはアライグマのみ。
アライグマは前足の指が極めて器用で、簡単なラッチや容器の蓋を外して中身を漁ることがある。ペットフード容器、ゴミ箱、物置の引き戸などが不審に開いていればアライグマを疑う。
第3章|侵入経路を特定する
アライグマは直径10cm前後の隙間でも侵入することがあります。木登り・綱渡り・水泳が得意で、屋根裏だけでなく、神社仏閣・蔵・空き家・水辺の倉庫など、人があまり立ち入らない構造物の上部から侵入します。前足の指が器用で、緩い金網や軽い扉は自力で開けることがあります。
アライグマはハクビシンよりさらに体が大きく、力もあります。築古住宅や倉庫の劣化部位は容易にこじ開けられるため、封鎖材は厚手の金網(4mm以上)+ビス固定が必須です。簡易の塞ぎ方では数日で破られます。
第4章|駆除手段を分解する
アライグマは特定外来生物のため、捕獲・運搬は外来生物法の規制下にあります。環境省の「アライグマ防除の手引き」でも示されているとおり、多くの自治体は防除実施計画を策定し、住民が捕獲従事者登録を行えば、わな猟免許なしでも合法的に捕獲に参加できる仕組みを用意しています。DIYでは原則として追い出しと侵入経路の封鎖に限定し、捕獲は自治体の防除事業に乗る形を取るのが基本です。
| 手段 | 効果 | 費用目安 | 強み | 弱み |
|---|---|---|---|---|
| 燻煙剤(屋根裏の追い出し用) | 中(追い出し用) | 1個1,000〜3,000円 | 屋根裏に煙を充満させて滞留個体を追い出す。一時退避をかけるための基本手段。 | 煙が抜けると戻る場合がある。授乳期の幼獣がいると逃げ遅れる。アライグマは学習能力が高く慣れる個体もある。 |
| 忌避剤(木酢液・固形タイプ) | 低〜中(補助) | 1個500〜3,000円 | アライグマが嫌う臭いで侵入を抑える。屋根裏・侵入口に置くだけで運用が簡単。 | 効果は一時的で、慣れて戻る個体が多い。単独では完全に追い出せない。 |
| ライト・超音波装置 | 限定的 | 1台2,000〜8,000円 | 光や音で警戒させて滞在を抑える。電源を入れるだけ。 | アライグマは学習能力が非常に高く、すぐに慣れる。根本解決にはならない。 |
| 侵入口封鎖材(金網・パンチングメタル) | 高(再侵入予防) | 1m500〜2,000円 | 出入り口を物理的に塞ぐ。追い出しと組み合わせることで再侵入を防ぐ唯一の根本対策。 | アライグマは器用な前足で軟弱な封鎖材を剥がすため、厚手の金網・ビス止めが必須。在宅中の封鎖は死骸処理問題を招く。 |
| 箱わな(防除事業による捕獲) | 高(要登録) | 1個3,000〜10,000円 | 捕獲できれば被害を確実に止められる。多くの自治体が外来生物法に基づく防除事業を実施しており、捕獲従事者登録で参加可能。 | 個人の独断による捕獲・運搬は外来生物法違反のリスク。生きたままの運搬・飼育は厳禁。捕獲後の処分は自治体の指示に従う必要がある。 |
箱わなで生け捕りしても、制度外でその個体を遠くに運搬したり、別の場所に放したりすると外来生物法違反になります。違反内容により罰則は異なりますが、野外への放出等では個人に最大で3年以下の懲役または300万円以下の罰金。防除事業外の独断捕獲は避けるべきです。
アライグマは前足の指が極めて器用で、軟弱な金網や簡易の塞ぎ方を自力で剥がします。封鎖は厚手の金網(4mm以上)をビス固定するなど、強度を意識した施工が必要です。
個体が屋根裏にいる状態で侵入口を塞ぐと、出られなくなった個体が屋根裏で死亡し、強烈な悪臭と害虫発生の原因になります。封鎖は退去確認後に行う必要があります。
アライグマ回虫は、国内の野生個体での感染確認は限定的ですが、海外では糞中の卵を介して重篤な幼虫移行症を起こす事例が報告されています。糞処理・屋根裏清掃は、手袋・マスク・消毒の徹底が必要です。
第5章|DIYかプロかの線引き
幼獣の鳴き声、複数の足音、ためフンが堆積している場合、家族で営巣している可能性が高い。授乳期は追い出しだけでは解決せず、専門業者の調査と段階的対応が必要。
屋根裏の糞尿汚染が進行している段階。アライグマ回虫の感染リスクもあるため、断熱材の撤去・消毒は防護装備と専門知識が必要。素人施工は健康面のリスクが大きい。
外来生物法の防除事業に参加するには、自治体の講習会受講・捕獲従事者登録などの手続きが必要。手続きの代行や、地元自治体との連携実績がある業者に任せた方が確実。
燻煙剤・忌避剤を試しても足音が止まらない、糞が増え続ける場合、侵入経路の特定ができていないか、複数の侵入口が並列に使われている可能性。専門業者の調査が早道。
第6章|法律・業者選び・感染症リスク
アライグマは、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)に基づき、特定外来生物に指定されています。生体の飼育・運搬・販売・野外への放出は原則禁止で、違反内容により罰則は異なりますが、野外への放出等では個人に最大で3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人には1億円以下の罰金が科されます。
一方で、自治体が策定する防除実施計画に基づく捕獲は合法です。多くの自治体では、住民が防除講習会を受けて捕獲従事者登録を行えば、わな猟免許なしでも捕獲に参加できる仕組みを設けています。
DIYで対応する場合は、追い出しと侵入経路の封鎖までに留めるのが安全。捕獲を視野に入れるなら、まず地元自治体(環境課・農林課)に相談して、防除事業の枠組みを確認するのが先決です。
アライグマ駆除を業者に依頼する場合、複数のチェックポイントがあります。業として建築物の有害生物防除を行う事業者は、建築物衛生法に基づく「建築物ねずみ昆虫等防除業」の登録が望ましく、登録には防除作業監督者の在籍が条件です。ただしこの登録は建築物内の「ねずみ・昆虫等」防除に関する制度であり、アライグマ捕獲そのものの法的適格性は、自治体の防除事業・捕獲従事者登録などで別途確認する必要があります。
アライグマ特有の論点として、自治体の防除事業との連携実績を確認するのが重要です。捕獲従事者登録を持つスタッフがいる、または手続き代行をワンストップで請け負える業者が望ましい指標になります。
さらに、屋根裏の糞尿汚染の清掃・消毒・断熱材交換まで対応できるかが業者の力量差として出ます。「追い出し→封鎖→清掃→消毒→再発防止」を一連で提案できる業者を選ぶことを推奨します。
アライグマは複数の人獣共通感染症を媒介する可能性があります。代表的なのがアライグマ回虫(Baylisascaris procyonis)で、糞中の卵を誤って摂取すると、幼虫が体内を移行して脳・眼に重篤な障害を起こすことが知られています。国内の野生個体での感染確認は限定的ですが、飼育個体での確認例があり、海外では重篤な事例が報告されているため、糞処理時は手袋・マスクを必ず着用し、処分後の手洗い・消毒を徹底してください。
狂犬病は日本国内で1957年以降の発生例はないものの、北米ではアライグマが野生動物の重要な感染源として知られています(東南アジアなどの流行地域では主に犬などからの感染リスクが中心です)。咬傷を受けた場合は速やかに医療機関へ。その他、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)、レプトスピラ症、疥癬などの媒介リスクも報告されています。
被害が確認された場所の屋根裏や敷地内に立ち入る際は、長袖・手袋・マスクを着用し、子供やペットを近づけないよう注意してください。詳細は自治体の保健所、または環境省「人と動物の共通感染症に関するガイドライン」を参照のこと。
参考情報
本ページの法令解説・分布史・防除事業・侵入経路・感染症リスクは、以下の公的機関・自治体・学術資料を参照してまとめています。
本ページの情報は一般的な目安として整理したものです。建物・地域・個体差により状況は異なるため、判断に迷う場合は最寄りの保健所・自治体や、登録のある防除業者にご相談ください。
調査・駆除を依頼する
家獣ラボは、特定の業者に偏らず複数の選択肢を整理する立場でつくっています。お住まいの地域・被害状況に応じた業者選びは、地域別ガイドと業者選びのページもあわせてご覧ください。