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夕暮れの古い木造アパート外観。外階段と並ぶ玄関ドア、共用廊下の蛍光灯が一部点灯し始めた佇まい。
住まいの事情|費用負担

賃貸物件で害獣が出たら誰が払うか
費用負担と相談順序

更新日:2026年5月19日読了時間:約7分カテゴリ:住まいの事情家獣ラボ編集部(運営:株式会社ドゥアイ)

賃貸住まいで害獣の被害に遭ったとき、駆除費用と修繕費を誰が負担するのか。大家、管理会社、入居者——三者の責任分界は、賃貸借契約と民法の構造から線引きされます。家獣ラボでは、費用負担の判定軸と、トラブルにならない相談順序を契約上の建付けから整理しました。

結論:原則は「貸主(大家)負担」、ただし条件次第で逆転する

賃貸物件で害獣が発生した場合、建物の構造・設備・経年劣化が原因で通常の居住に支障が出ているケースでは、駆除費用と修繕費は貸主(大家)が負担するのが基本です。根拠は民法第606条「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」という規定で、建物側の侵入経路封鎖や原因究明が必要なケースでは、この修繕義務の問題として整理されます。

ただし、民法第606条には但し書きがあります。「賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない」——つまり、入居者の過失や管理ミスが原因で害獣・害虫被害が発生した場合は、入居者負担となります。なお、害獣駆除費そのものが常に第606条の「修繕」と直結するわけではなく、被害の原因が建物側か入居者側かの調査結果によって判断が変わります。

この「賃借人の責めに帰すべき事由」に該当するかどうかが、賃貸における害獣費用負担の最大の争点です。建物の構造的欠陥か、入居者の管理ミスか。この線引きが、誰が払うかを決めます。

費用負担を分ける3つの判定軸

害獣被害の費用負担は、次の3点で大筋が決まります。請求や相談を進める前に、自身のケースを整理しておきましょう。

1
害獣侵入の原因は、建物の構造的欠陥か、入居者の管理ミスか 屋根・外壁・天井裏・通気口など、建物の経年劣化や元々の構造的な隙間が侵入経路となっている場合、民法第606条の賃貸人の修繕義務範囲。ゴミの長期放置・清掃不足・換気不良といった入居者の生活管理に起因する場合は、賃借人の善管注意義務違反として入居者負担となります。ただし、入居者負担とするには、清掃不足・ゴミ放置・換気不良などの管理ミスと害獣・害虫発生との因果関係を、現地調査や記録で示せることが前提です。原因が不明なまま「入居者の過失」と扱われるわけではありません。
2
賃貸借契約書の特約条項に、害獣・害虫関連の記載があるか 契約書によっては「害虫・害獣の駆除費は入居者負担」とする特約条項が含まれている場合があります。この種の特約が常に無効になるわけではありませんが、建物原因の被害まで一律に入居者負担とするような条項は、消費者契約法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)により無効と判断される余地があります。判断は特約の文言・範囲・契約時の説明状況・被害原因・賃料水準などで変わるため、まず契約書原本の特約欄で記載の有無を確認することが先決です。
3
損害の範囲は、通常損耗か、過失による損害か 経年劣化や自然な使用に伴う損耗は、民法第621条により原状回復義務の対象外です。国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも、通常損耗の範囲は賃貸人負担と整理されています。入居者の故意・過失が立証された場合のみ、退去時の原状回復費として入居者負担となります。

実例:費用負担はこう分かれた

以下は、国民生活センター「賃貸住宅の原状回復トラブル」国土交通省「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集」などで公開されている相談傾向と、実務上の典型論点をもとにした架空のモデルケースです。実在の特定事例ではなく、判定軸ごとに費用負担の構造がどう分かれるかを整理しています。なお、CASE 02・04は「害虫」の事例ですが、賃貸における費用負担の判定構造は害獣・害虫で共通のため、判定軸の説明として併記しています。

CASE 01

天井裏のネズミ被害、駆除費は大家負担と判断

築40年超の木造アパート2階の入居者から「深夜の天井裏で足音、配線をかじられた跡がある」と相談があった事例です。管理会社が現地調査したところ、屋根の通気口の経年劣化と、換気扇フードのカバー破損が侵入経路と判明しました。

建物の構造的欠陥に起因する被害として、民法第606条の賃貸人の修繕義務範囲と判断。駆除費用と侵入経路の封鎖工事は大家側の全額負担となりました。入居者側は被害発見直後に書面で通知していたため、過失を問われずに済んでいます。

CASE 02

室内のゴキブリ大量発生、駆除費は入居者負担

築5年の鉄骨マンションに単身入居中の住人宅で、台所周りにゴキブリが大量発生した事例です。管理会社が現地確認したところ、生ゴミの長期放置、流しの排水口の清掃不足、収集日を過ぎたゴミの放置が確認されました。

建物自体に侵入経路となる構造的欠陥は見つからず、入居者の生活管理に起因する害虫発生と認定。駆除費用は入居者の自己負担となりました。賃借人の善管注意義務(民法第400条)の範囲内とされた典型例です。

CASE 03

外壁の隙間からハクビシン、修繕費も含めて大家負担

築30年の木造アパート2階の入居者宅で、天井裏からの異音と糞被害が発生した事例です。被害発見直後に管理会社へ書面で通知し、写真記録も残していました。専門業者の調査で、外壁漆喰の剥離部分と軒下の隙間が侵入経路と判明しました。

建物の老朽化に起因する被害として、駆除費用に加えて外壁修繕費・天井裏清掃費まで全て大家側の負担となりました。入居者は早期通知と被害記録の保管によって、自身の過失を否定できた事例です。

CASE 04

ペット由来のノミ・ダニ、退去時に原状回復費を請求

ペット可物件で犬を飼育していた入居者の退去時、室内のノミ・ダニ被害が確認された事例です。畳・カーペット・建具の隙間にダニが繁殖しており、特殊清掃と一部建具の交換が必要となりました。

ペット可物件であっても、ペット由来の害虫被害は入居者の管理責任範囲となります。退去時の原状回復費として、特殊清掃費・建具交換費が敷金から精算されました。ペット可特約で飼育を認められていても、被害発生時の負担責任は別問題、という構造です。

相談順序と連絡フローの組み立て方

害獣被害を発見したら、独断で動く前に正しい順序で関係者へ連絡することが、費用負担トラブルを防ぐ最大の防衛策です。次の5ステップを基本動作として押さえます。

1
管理会社・大家への第一報 被害発見後、できるだけ早く管理会社または大家へ連絡。口頭連絡だけで終わらせず、後の記録のためにメール・LINE・書面など文字で残る形での通知を併用します。連絡時点で「いつ、何が、どこで」起きたかを明確に伝えます。
2
書面(メールでも可)での被害状況通知 被害箇所の写真、被害発見日、目撃した害獣の種類・頻度、損害の具体的内容を整理して書面送付。これが後にトラブル化した際の証拠になります。早期通知の事実そのものが、入居者の過失を否定する材料にもなります。
3
駆除業者の手配主体を確認する 大家・管理会社が直接業者を手配するパターンと、入居者が立替払いで手配するパターンがあります。どちらの建付けで進めるかを事前に文書で確認しないと、駆除完了後に費用負担で揉める原因になります。「自分で業者を選びたい」場合は、その旨も含めて事前合意を取ります。
4
費用負担の事前合意 見積書を取得した段階で、誰が・どの範囲を・いくら負担するかを書面で合意します。「全額大家負担」「立て替えで支払うが後日全額返金」「半額負担」など、合意内容を明文化することが、後のトラブルを防ぎます。
5
領収書・写真・通信履歴を全て保管 駆除作業前後の写真、業者の見積書・領収書、大家・管理会社とのやり取り(メール・LINE・書面)を全て保管します。退去時の敷金精算や、原状回復費の請求時にも証拠として活用できます。

やってはいけない4つの対応

賃貸の害獣トラブルで費用負担が揉める原因は、業者選びそのものよりも、連絡順序や記録管理のミスにあります。次の4つは、入居者側が陥りやすい典型的な失敗パターンです。

注意

独断で進めると、費用負担で揉める

  • 大家・管理会社への連絡前に、独断で駆除業者を呼んでしまう。費用負担の合意がないまま施工が進むと、後の請求で揉める原因になります。
  • 費用負担を口頭の合意だけで進める。「半額負担で」と電話で約束しても、書面がなければ立証が困難。最低でもメールで合意内容を残します。
  • 領収書・見積書を保管せず、立替払いだけ済ませる。後日請求しようとしても証憑がないと、大家側に「金額の根拠が不明」と拒否される事例があります。
  • 賃貸借契約書を読まずに「払う・払わない」を判断する。契約書の特約条項によって、ベースとなる結論が変わる場合があります。

賃貸借契約書で確認すべき3つの条項

害獣被害が発生したら、まず契約書原本を取り出します。次の3つの条項を確認することで、自身のケースのベースラインが見えてきます。

1
修繕義務に関する条項 標準的な賃貸借契約書では、民法第606条の修繕義務がベースとなります。ただし、契約書に「軽微な修繕は入居者負担」とする特約条項がある場合、害獣駆除がこの「軽微な修繕」に含まれるかが争点になります。判断は契約書の文言と過去の裁判例次第です。
2
害獣・害虫関連の特約条項 契約書の特約欄に「害虫・害獣の駆除費用は全額入居者の負担とする」といった条項がないか確認します。この種の特約は常に無効になるわけではありませんが、建物原因の被害まで一律入居者負担とするような条項は、消費者契約法第10条により無効と判断される余地があります。まずは存在の有無を把握し、内容を踏まえて争点になり得るかを整理することが先決です。
3
善管注意義務の範囲 民法第400条に基づく善管注意義務として、清掃・換気・ゴミ管理など、入居者が日常的に負うべき義務の範囲が契約書に明示されているケースがあります。この範囲を超えた管理不備があれば、入居者責任の根拠となります。

大家・管理会社が動かない時の相談先

書面で通知しても対応がない、費用負担で対立して進まない——そうした場合に利用できる公的窓口がいくつかあります。状況に応じて使い分けましょう。

消費者ホットライン(局番なし188)

全国共通の3桁番号で、消費者庁に直接つながる番号ではなく、最寄りの消費生活センターや地方公共団体の相談窓口を案内する全国共通ダイヤルです。賃貸借契約上のトラブル全般について、案内された相談窓口の相談員が対応します。費用負担の分界が不明確な場合の初動相談として有効です。

公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会

賃貸住宅管理業者の業界団体。「賃貸住宅に関する相談」窓口を設けており、入居者・家主・管理会社を対象に、賃貸住宅のトラブルについて一般的な助言を行っています。会員企業を指導・処分する機関ではなく、書面・平日中心の受付で実務的なアドバイスを提供する相談窓口です。

各自治体の住宅相談窓口

多くの都道府県・政令指定都市・特別区が、無料の住宅相談窓口を設置しています。賃貸借契約上のトラブル、敷金返還、原状回復費用などの相談を受け付けています。お住まいの自治体名と「住宅相談」で検索すると窓口が見つかります。

法テラス(日本司法支援センター)

サポートダイヤル:0570-078374(平日9〜21時/土曜9〜17時)。法制度や相談窓口を案内する電話窓口です。これに加えて、収入・資産などの要件を満たす場合は、弁護士・司法書士による無料法律相談(民事法律扶助制度)や、費用の立替制度を利用できます。費用負担額が大きく、訴訟も視野に入る場合の相談先です。

「払う・払わない」の対立で終わらせない

賃貸の害獣トラブルは、駆除費用そのものよりも、入居者と大家の関係性を損なう副次的な被害の方が大きい場面があります。費用負担で揉めたまま長期化すると、入居者は引越しを検討し、大家は次の入居者募集に影響が出るという、双方損の結末になりがちです。

建物の構造的問題が原因なら、大家にとっても放置はリスクです。一度発生した侵入経路を塞がない限り、入居者が入れ替わっても被害は再発します。空室期間の損失や物件価値の低下を考えれば、大家側にとっても早期解決が合理的な判断です。

入居者側に必要なのは、感情的な対立ではなく、判定軸と相談順序に沿った冷静な対応です。早期通知、書面記録、契約書の確認、費用負担の事前合意。この基本動作を踏むことで、費用負担トラブルの大半は防げます。

賃貸でも、業者選びの判断軸は同じ

費用負担の合意が取れて、入居者側で業者を手配する場面では、業者選びの目利きが必要になります。家獣ラボでは、業者選びの基準と、害獣の正体を絞り込む診断ツールを用意しています。